帰るところは?。



帰る鳥帰るところのなくなりぬ     衣光陽子



一読、太平洋は小笠原諸島の無人島の西之島が
脳裏に浮かびました。有史以来、幾たびも火山噴火を
繰り返してきた島なのですが、この島にも海鳥が住んでおり、
二〇一三年の噴火の時には、溶岩が島全体を呑み込み、
海鳥の住む余地が無くなってしまいました。
しかし、そんな苦難にもめげず、二〇一五年には
一ヘクタールほどの僅かに残る旧島部分で
海鳥の繁殖が確認されたそうです。
その後も渡り鳥のアトリなどが姿を見せるなど、
動物たちは常に住む場所、帰る場所を求めて、
活動しているのだと感心したものです。
掲載句の帰るところがなくなったとの表現は、
明らかに人間側の感傷的な気持ちであり、
どんな困難にも負けない動物たちから学ぶことが
多くありますね。




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